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【企業インタビューvol.10】「自分で考えて、納得して選ぶ」しなやかに生きるための場所づくり
内容
結婚、出産、育児。ライフステージの変化は、働く女性にとって大きな転機となります。「仕事か家庭か」の二者択一ではなく、「私らしい働き方」を模索する女性たち。そんな彼女たちの背中を押し、共に走る場所、それが 協同組合ライクミー新潟です。起業を目指す女性や、すでに事業を営む女性たちが集い、互いに支え合うこのコミュニティを牽引するのは、代表理事の駒井沙織さんです。ご自身も子育てをしながらの起業や、ライフステージの変化を経て、現在は二児の母として奮闘する駒井さん。その活動の根底にあるのは、精神論だけではない「人間関係の仕組み」への深い理解と、「自分で決めること」へのこだわりでした。
プロフィール
協同組合ライクミー新潟(本社:新潟市中央区)
2021年に任意団体として発足し、2023年に法人化。「大好きな新潟で人とのつながりを大切にして私らしい未来を切り拓く」を理念に掲げる。女性起業家の育成・支援を主軸に、交流会の開催、マルシェイベントの運営、ビジネススキルの勉強会などを展開。会員同士が対等な立場で支え合う「協同組合」という組織形態をとっていることが大きな特徴。駒井 沙織(こまい さおり)さん
2011年より新潟県の街コンイベント【潟コン】の仕掛け人の一人として活動。人間関係の問題を解決するコミュニケーションスキルの講師の他、マネジメント研修、ハラスメント指導、女性社員教育プログラムを行い、2021年に協同組合ライクミー新潟を立ち上げ。現在は二児の母として、仕事と子育ての両立に奮闘している。「両立できない」豪雪が突きつけた転機
「とにかく青森から出てみたかったんですよね」
そう語る駒井さんが新潟に来たのは25歳の時。青森からの転勤がきっかけでした。「青森より都会的で、でもそれ以外の良い部分が全部、青森と同じというか。食べ物の美味しさだったり、車でどこにでも行けちゃうところだったり、そうした部分はむしろ変化がなかったのですぐに馴染めた感じでした」
その後、新潟県内で転職も経験し、その傍らで大規模街コンイベント「潟コン」の運営に携わるなど、順調にキャリアを重ねていきました。しかし、出産を経て管理職として復帰した時、仕事と家庭の両立という現実的な壁にぶつかります。

「保育園のお迎えはいつも最後。ホールの明かりが消え、静まり返った園内で、先生と遊んで待っている娘の姿を見るたび、胸が締め付けられる思いでした」
そんな日々の中、いつかは独立できたらという淡い思いもありましたが、決定打となったのは2018年1月の大雪でした。普段なら車で20分の通勤路が、雪による渋滞で2時間以上かかる日々。仕事と送迎だけで一日が終わっていく中、ふと限界を感じたといいます。
「もう会社員として働き続けるのは無理かもしれない」
半ば勢いで退職を決意。何の保証もない中での独立でしたが「自分のスキルには需要があるはず」という期待だけを頼りに、一歩を踏み出しました。
コロナ禍の孤立から生まれた「協同組合」という形
独立後は、持ち前の行動力と「潟コン」で培ったコミュニケーション講師としてのスキルを武器に活動を開始。しかし、その後新型コロナウイルスの流行が始まり、学びの場やリアルな交流の機会がすべて断たれてしまいました。
「つながれる場所がないなら、自分で作るしかない」

そうして2021年に立ち上げたのが「協同組合ライクミー新潟」です。目指したのは、単なる仲良しグループでも、上下関係の厳しい組織でもない場所。「私がトップでみんなが下、というピラミッド構造にはしたくなかったんです。みんなが対等で、会員一人ひとりが主役になれる場所にしたかった」 その想いから、法人化にあたっては株式会社ではなく「協同組合」という形を選びました。利益を追求するだけでなく、組合員全員が相互に扶助し合う仕組み。このフラットな関係性こそが、同じ志を持つ女性たちの心の拠り所となっています。
起業も、会社員も「納得」して選ぶことが大切
新潟県は、女性社長の比率が全国でも非常に低い県だと言われています。「相談に来られる女性の多くに、『私、これをやってみたいんですけど、どう思いますか?』と尋ねられます。自信が持てずにいて、誰かに『いいじゃん!』と言ってほしい、そんな思いを抱えている方が多いんです」

駒井さんはまず、その人の「やりたい」という想いを受け止めます。しかし、決して無責任に起業を勧めるわけではありません。「話を聞いてみて、『今は会社員のままの方がいいんじゃない?』とアドバイスすることもあります。大切なのは、起業するかどうかではなく、その選択に自分が『納得』できているかどうかです」
誰かに言われたからではなく、自分で情報を集め、自分で考えて決めること。もし大変なことがあっても、自分で納得して選んだ道なら「楽しい」が勝るはず。同組合は、そのための判断材料や経験を共有できる場所でもあります。
「違い」を知れば、人間関係はもっと楽になる
駒井さんの活動のもう一つの柱が、「異性間コミュニケーション」の講師としての顔です。 「家庭でも職場でも『思いやり』だけで全てを解決しようとすると、どこまで我慢すればいいのか分からなくなってしまいます。大切なのは、男女の脳の仕組みや歴史的背景による『違い』を、知識として理解することです」

相手がなぜそのような言動をとるのか、その背景にある「違い」を知れば、必要以上に傷ついたりイライラしたりすることは減ると駒井さんは語ります。「多様性の社会だからこそ、まずは基本となる違いを理解した上で、相手に合わせて柔軟に対応していく。そうすることで、家庭も仕事も、もっと生きやすくなるはずです」 この冷静で論理的な視点こそが、多くの女性だけでなく、企業研修などでも支持される理由かもしれません。
「完璧じゃなくていい」ありのままを見せる強さ
現在、10歳と1歳半のお子さんの育児真っ只中でもある駒井さん。仕事と家庭の両立における工夫を尋ねると、少し考えた後、「完璧を目指さないことです」と教えてくれました。「元々は完璧主義だったんです。でも、今は『料理をする余裕がないときはコンビニでもスーパーのお惣菜でもいい』『部屋が散らかっていてもいい』と自分に言い聞かせています(笑)」

その姿勢は、SNSでの発信にも表れています。仕事でキラキラと輝く「オン」の姿を見せる一方で、散らかった部屋や、育児に奮闘中の「オフ」の姿も隠さずに投稿。「女性起業家のロールモデル」としての憧れと、「同じ悩みを持つママ」としての親しみやすさ。その両面をさらけ出すことで、多くの共感を呼んでいます。「かっこよく見せすぎるのではなく、生活感も見せる。そうすることで『私にもできるかも』と思ってもらえたら嬉しいですね」
「違い」を知り、認め合う先に
駒井さんは、協同組合ライクミー新潟の今後のビジョンとして、会員のサービスを扱うECサイトの構築や、家事代行・託児サービスの展開を構想しています。「地産地消」ならぬ「地人地消」。顔の見える信頼できる新潟の仲間に、家事や育児を頼める仕組みを作ることで、女性たちがより働きやすい環境を整えようとしています。

「情報があふれる今の時代だからこそ、『自分で考えて、自分で決める』ことが大切です。誰かに言われたからではなく、自分で納得して選んだ道なら、どんなに大変でもきっと続けられます」と語ってくれました。
例えば、人と人の違いを理解すること。情報共有や話し合い、時には相互理解のために自己開示に取り組むことも、職場や家庭が円滑に、円満であるために必要なことかもしれません。そして自分で納得して選択すること、そのためにまた自分について考え、周囲を見渡してみる。そんな行動の積み重ねこそが、あなたらしい未来、そして誰もが心地よく暮らせる社会を切り拓く鍵になるはずです。
●今回取材させていただいた企業
協同組合ライクミー新潟(新潟市)
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