【ファミリーインタビューvol.1】移住 10 年間で築いた地域とのつながりと理想の子育て環境
内容
神奈川県横浜市出身で、結婚を機に新潟県長岡市に移住して 10 年。現在は地域密着型のマーケティング会社で営業職として活躍しながら、小学 4 年生と 1 年生の娘 2 人を育てる堀さんにお話を伺いました。県外出身者として感じた新潟での子育ての魅力、仕事と育児の両立術、そして時間をかけて築き上げた地域でのネットワークについて語っていただきました。

プロフィール:堀 美穂(ほりみほ)さん
神奈川県横浜市出身、夫と小学生の娘二人の 4 人暮らし。
横浜で製薬会社の MR として勤務中、夫と出会う。夫の新潟 U ターンを機に結婚・移住を決意。2014 年 10 月にグローカルマーケティング株式会社に入社し、営業職として約 11 年間勤務。テレワークや時短勤務制度を活用しながら、フルタイムで仕事と子育てを両立している。

出会いと移住の決断
結婚のきっかけは東京での偶然の出会いでした。飲食店で隣のテーブルにいた現在の夫と知り合い、お付き合いが始まりました。夫は社会人 6 年目、私は 1 年目の頃のことです。
夫は大学進学を機に新潟から上京していましたが、当初からいずれ地元の長岡に戻るという話をしていました。実家の方も夫の帰郷を見込んで家を建て替えていたほどで、私も付き合っている時から「結婚したら新潟に行くのだろうな」と自然に思っていました。夫が先に新潟に戻って仕事を見つけ、その 1 年後に私が入籍して長岡市に移住しました。26 歳の時のことです。
情報のない状態からのスタート
新潟で暮らすことについて、正直なところ具体的なイメージは持っていませんでした。まったく友達がいない状況で、新潟市に大学時代の同じゼミの友人が 1 人いる程度。それほど親しいわけでもなく、とにかく情報がない状態でした。
移住したのは 3 月頃で、雪はまだ残っていましたが、冬の環境や過ごし方について何も分からず、「とりあえず行ってみて、暮らしてみよう」という感じでした。当時は MR の仕事をリモートで継続しており、1 日のうち仕事のことを考える時間の方が長かったので、生活について楽しいとか楽しくないとか、そこまで考える余裕が正直なかったため、逆に寂しいとか困っているなどとも思いませんでした。
孤独感からの転職
前職を継続していたので急いで転職する必要もなかったのですが、直行直帰の仕事で職場の人とのやり取りも限定的だったため、次第に孤独感を強く感じるようになりました。
同じ職場でも移住前は、後輩や上司との人間関係を築けていましたが、新潟では直行直帰スタイルの勤務のため同僚とのコミュニケーションも限定的で、次第に孤独感を強く感じるようになりました。モチベーションも上がらない状況でした。そんな時、転職エージェントからグローカルマーケティングを紹介され、「すごく地元のことを考えている会社だな」と感じ、入社を決めました。
制度を活用した仕事と子育ての両立
2016 年に長女、2018 年に次女を出産し、それぞれ産休・育休を取得しました。「トキっ子くらぶ(新潟県の子育て優待カード)」を運営している会社だから子育て家庭に温かいだろうと期待していましたが、実際にその通りでした。
これまでに様々な制度を利用して子育てと両立してきました。最初は 6.5 時間の時短勤務、そこから 7 時間、7.5 時間と少しずつ時間を増やしていき、今は 8 時間フルタイムです。また、勤務時間を通常 9 時からのところ、お迎えの都合を考慮してもらい 8 時 20 分から 17時 20 分に変更。18 時までに児童館にお迎えに行けるようにしています。また、プチフレックス制度という、2 時間以内で中抜け可能な制度を使って、習い事のお迎えや学校行事への参加も調整しています。
テレワーク制度もよく活用しており、昨年は週 2 回以上がテレワークの日でした。今年は若手を育成する立場になり、意識的に会社に来る日を増やし後輩とのコミュニケーションを大切にしています。毎日出社、毎日在宅といった縛りがない分、子どものお迎えを考慮してテレワークにするなど、自分でコントロールできるのが助かっています。
10 年かけて築いた家庭内の役割分担
夫は忙しく、平日はほぼ夜いない状況ですが、10 年かけて朝の役割分担を確立しました。夫は洗濯物をたたむこと、食洗器の食器を戻すこと、そして私が夜に回した洗濯を干すことを担当してくれています。
そんな中で大切にしていることは、「朝ごはんは家族全員で食べること」です。朝しかみんなの時間がないからです。私が 6 時に起床して準備を始め、夜ご飯の準備も一緒に済ませ、7 時半に子どもたちが出かけるタイミングで朝食を取ります。
自分が子どもの頃にカギっ子だった経験から、朝の見送りだけは必ずしたいと思っています。一緒にゴミを出しながら「いってらっしゃい」と言える時間を設けることを大切にしています。
新潟の充実した子育て環境

子どもたちは公園が大好きで、保育園時代は毎日、徒歩 1 分の近所の公園に通っていました。休日は少し遠出して、五泉市や阿賀町、三条市、見附市、魚沼などの大きな公園を巡るのが定番でした。
横浜と比較すると、新潟の公園は駐車場が無料のところが多いことに驚きます。横浜だと大きな公園は駐車場が有料で満車になることも多く、お金も時間もかかります。県外から友達が来た時も、駐車場も入場料も無料であることに驚いていました。
子育て支援施設の充実も大きな魅力です。長岡市の「てくてく」や「ぐんぐん」などの施設で出会った人たちとの交友関係が広がり、現在も年賀状を送り合う仲の友人ができました。面白いことに、4 人のママ友グループのうち 3 人が県外出身者でした。支援施設では県外から来た人たちが自然と繋がりやすいのかもしれません。
自然体験の豊かさ
稲刈りや田植え体験ができることも新潟ならではの魅力です。都会では有料で体験するようなことを、地域の知人にお願いすれば快く受け入れてくれます。海水浴も駐車場代がかからず、自然が身近にあることを強く実感します。
この夏も特に感じましたが、わざわざお金を払って体験するのではなく、身近な人から様々な体験を得られる機会が本当に多いと思います。また冬は公園などで雪遊びができるのも新潟ならではの子育て・遊び方だなと思い楽しんでいます。

地域に根ざした暮らし
10 年以上住んでいる今、どこかに行けば誰かに会えるようなネットワークを感じるようになりました。公園でもショッピングセンターでも、知り合いに出会える。この感覚が、ここに居続けられる理由であり、新潟が自分のベースだと思えるようになった要因です。
習い事では毎日、夫の両親に送りをお願いし、お迎えは私が担当するという協力体制も確立しています。車社会の利便性も大きく、お迎えに行ってそのまま病院に向かうなど、移動が楽に感じます。
働くママへのメッセージ
段階を経て最終的にフルタイムに戻しましたが、焦る必要はないと思います。その時にしかできない子育てを大切にしながら、自分のペースで働き方を調整していけばよいのではないでしょうか。

フルタイムでも割り切ってやればできますし、私は結果的に良かったと思っていますが、それも人それぞれ、環境によると思います。きっとこれからも子どもの成長に合わせて変化があるのだと思います。
仕事を優先したい時期があってもいいし、子育て優先の時期があってもいい。そんな柔軟な選択ができる会社が県内に増えていけば、もっと多くの人が理想の働き方を実現できるのではないでしょうか。
県外出身者として新潟に根を下ろし、充実した子育て環境と柔軟な働き方を手に入れた彼女の体験は、地方移住を検討する多くの人にとって心強い指針となるでしょう。時間をかけて築いた地域でのネットワークと、制度を上手く活用した仕事と子育ての両立は、新潟での新しい生活の可能性を示しています。



