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【企業インタビューvol.3】和を育む。職員と地域に寄り添う働き方改革
内容
新潟市にある「アルル保育園」。ここでは、職員一人ひとりのライフステージの変化に寄り添い「お互い様」の精神を大切にした職場環境づくりが進められています。それは、職員の満足が保育の質、ひいては保護者の安心や「子育てしやすい地域づくり」にもつながると信じているからです。同園の園長先生と理事長先生に、その背景にある思いと具体的な取り組みについてお話を伺いました。

プロフィール
社会福祉法人仁和会 アルル保育園
新潟市に拠点を置く保育園。「アルル」という名前は、フランス南部の都市アルルに由来し、古代ローマ時代の劇場を園舎にたとえて「常に子どもたちが中心にいて、そこにスポットライトが当たるように」という先代の理事長の思いが込められている。園長先生
保育士として15年間勤務した後、出産・子育てに専念。その後、幼児教室の講師や保育士育成の仕事にも携わる。多様な立場での経験を活かし、アルル保育園では主任を経て園長に就任。自身の経験から「職員が働きやすい職場」の実現を第一に考えている。理事長先生
先代であるお父様が大切にしていた和の精神を受け継ぎ、園を運営。現場の声を尊重しつつ、保育園が「子育てしやすい地域づくり」の拠点となることを目指している。すべての始まりは「働きやすい職場」への思い
「私たちが目指すのは、職員一人ひとりの思いがかなう保育園です」と、園長先生は語ります。その根底にあるのは、ご自身が保育士として働いていた時代の経験でした。

「以前は、有給休暇があっても使えない、使いにくいという雰囲気が当たり前のようにありました。でも、制度としてあるのに使えないのでは意味がありません」と園長先生は振り返ります。「職員が休みを取り、私生活が潤えば、それが仕事への活力となり、結果として保育の質も上がる。そうした良い循環を生み出したかったのです」
その思いから、アルル保育園では「働きやすさ」を最優先事項として掲げ、有給休暇の取得を積極的に推進。現在では、職員が気兼ねなく休みを取れる環境が整いつつあります。
ライフステージの変化に対応する「お互い様」の仕組み
園の立ち上げ当初は若い先生が多かったものの、時を経て出産や子育てを経験する職員が増えてきました。育児休業からの復帰、そして時短勤務へ。職員のライフステージが変われば、求められる働き方も多様化します。
「子育て中の職員は、子どもの体調不良などで急に休むこともありますし、時短勤務で早く帰ることもあります。それは当然の権利ですが、一方で、その分をカバーする他の職員に負担が集中してしまう現実もありました」
特定の職員に負担が偏り「あの人ばかり休んでずるい」といった不満が募れば、職場の雰囲気は悪化し、離職にもつながりかねません。園長先生が最も心を砕いたのは、このバランスをどう取るか、ということでした。

「子育て中の職員が休みやすい環境を守りつつ、カバーしてくれる職員が不満を抱えないように、その都度話し合いを重ねました。例えば、シフトに多く入ってくれる職員やベテランの先生には、時間外手当をつけたり、賃金をアップしたり、あるいは別の日に振替休日を取ってもらうなど、お互いが『お互い様』と納得できる形を模索し続けてきたのです」
「いつ誰がどのような事情で休むことになるか分かりません。だからこそ、今頑張ってくれている人が損をしないように。お互いにメリットがある形を考えることが大切でした」
園長先生が続ける地道なすり合わせが、現在のアルル保育園の強固な信頼関係の土台となっています。
「言いにくいこと」を拾い上げるコミュニケーション術
職員が納得して働くためには、彼らの本音を知ることが不可欠です。しかし、立場上、園長先生に直接不満や要望を言いにくいと感じる職員もいるかもしれません。

そこで導入したのが、年に一度のアンケート調査です。ここでは、職場の良い点だけでなく、不満や改善してほしい点も自由に記述できるようにしています。
「言葉で直接伝えるのは難しくても、文章なら本音を書きやすいという人もいます。私たちは、良いことも悪いこともすべて受け止め、それをどう改善していくかを考えます」
さらに、アンケートの結果をもとに、全職員と個人面談を実施。ここでは、次年度にどのクラスを持ちたいか、今年はどうだったかといった具体的な希望もヒアリングします。
「もちろん、日常的にも『何かあったらいつでも言ってね』と声をかけるようにしています」と園長先生は微笑みます。問題が小さいうちに、大きくなる前に早めに対処する。この徹底したコミュニケーションが、不満の芽を摘み、働きやすさを守っているのです。
先代から受け継ぐ和の精神と「アルル」の由来
職員室の中央には、ひときわ目を引く大きなデスク。これは理事長先生のお父様である先代の理事長が「みんなで話し合えるように」と探してきたものだそうです。
「父は和をとても大切にする人でした。だからこんなデスクなんです」と理事長先生。

「開園当初、人も少ない、物もないところからスタートして、いろんなものを手作りしたんです。子どもの誘導ロープも全部手作りでしたね」
皆で知恵を出し合い、協力し合う精神をこのデスクが象徴しているようです。
また「アルル」という園名にも「古代ローマの円形劇場のように、常に子どもたちが舞台の中心にいて、そこにスポットライトが当たり続ける場所であってほしい」という特別な願いが込められています。
園が目指す「子育てしやすい地域づくり」
先代の思いを受け継ぐ理事長先生は、保育園の役割は単なる「就労支援」に留まらないと語ります。

「私たちは『子育てしやすい地域づくり』に貢献したいと考えています。初めて親になった方は、ネットの情報だけでは不安なことも多いはず。そんな時、保育士というプロに気軽に相談できる“オフラインの場所”として、園が機能することが重要です」

園長先生も、子どもとの関わりを大切にし、子育ての時間を楽しんでほしいとメッセージを送ります。「子どもの成長はあっという間です。仕事との両立で大変な時こそ、お子さんが甘えてきた時には、満たされるまでしっかり甘えさせてあげてほしい。そうして心が満たされれば、子どもは自然と早く自立していきますから」
職員が安心して働ける環境は、保育の質の向上につながります。そして、保育士が笑顔で子どもと接することが、保護者の安心につながる。アルル保育園は、その「和」を園の内側から外側へ、地域全体へと広げようとしています。
アルル保育園が目指すのは、職員も子どもも保護者も、関わるすべての人が「ここで良かった」と思える場所であること。そのために、今日も現場の声に耳を傾け、一つひとつの思いを丁寧に紡いでいます。「お互い様」の精神で育まれた温かい「和」が、これからも未来を担う子どもたちと、彼らを支える人々を温かく照らし続けていくことでしょう。
●今回取材させていただいた企業
社会福祉法人仁和会(新潟市)
https://arles-nurseryschool.com/



