【企業インタビューvol.5】介護現場の常識を覆す「サポーター制度」地域の手で支え合う、長岡発の新しい働き方

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【企業インタビューvol.5】介護現場の常識を覆す「サポーター制度」地域の手で支え合う、長岡発の新しい働き方

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2026.01.23
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内容

深刻な人手不足が叫ばれる介護業界において、新潟県長岡市で驚くべき成果を上げている企業があります。「応募ゼロ」という危機的状況をバネに、業務の徹底的な棚卸しと切り分けを敢行。地域住民が短時間から働ける「サポーター制度」を確立しました。現在では子育て中のママから学生、シニアまで、多様な人材が活躍する活気ある職場へと変貌を遂げています。この革新的な取り組みについて、制度の仕掛け人と現場責任者のお二人に話を伺いました。
 

プロフィール

株式会社太陽メディケアサービス(本社:新潟県長岡市)

有料老人ホーム「メッツ」シリーズやデイサービスなど4つの介護施設を運営。「医療・薬・介護」の強固な連携を軸に、安心・安全な生活を提供している。 同社が導入した「サポーター制度」は、人手不足解消と多様な働き方を実現するモデルとして高く評価され、令和6年度には厚生労働省による「介護職員の働きやすい職場環境づくり表彰」において「厚生労働大臣表彰 優良賞」を受賞(介護付きホーム メッツ長岡)。業界のモデルケースとして大きな注目を集めている。
 

小林 和徳(こばやし かずのり)

太陽メディケアサービス株式会社 専務取締役事業本部長。3年前の施設開設時に直面した採用難を機に、介護業務の構造改革に着手。資格の有無にかかわらず多様な人材が活躍できる仕組みをゼロから構築し、組織全体の運営統括を担う。
 

中島 愛香莉(なかじま あかり)

介護付きホーム メッツ長岡 管理者。入居者様とスタッフ、そして多くのサポーターをまとめる施設長。私生活では1歳のお子さんを育てる母親でもあり、産後4カ月で職場復帰を果たした当事者として、現場の働きやすい環境づくりに尽力している。
 

「応募ゼロ」の衝撃から生まれた逆転の発想


「3年前、施設の開設にあたって介護士や看護師の募集をかけました。ところが、蓋を開けてみれば応募はゼロ。全く集まらなかったんです」



小林さんは当時をそう振り返ります。通常であれば、既存のスタッフに無理をお願いしてシフトを回すか、採用コストをさらにかけるかという選択になりがちです。しかし、小林さんたちが選んだ道は「業務そのものの見直し」でした。

「フルタイムで働ける有資格者を探すから見つからないのではないか。短い時間でも働ける人、資格がなくても意欲のある人は地域にたくさんいるはずだ」そう考えた小林さんは、現場の業務を徹底的に棚卸しすることから始めました。



介護の仕事は、食事や入浴の介助といった専門的な技術が必要な業務ばかりではありません。掃除、洗濯、配膳、ドライヤーで髪を乾かすこと、そして入居者様と楽しくお話をすること。これらは必ずしも「介護士」でなくてもできる仕事です。

そこで生まれたのが、これらの周辺業務を担う「サポーター」という新たな職種でした。
 

「介護助手」ではなく「サポーター」に込めた想い


この制度のユニークな点は、そのネーミングにも表れています。業界では一般的に「介護助手」や「介護補助」と呼ばれるポジションですが、同社ではあえて「サポーター」と名付けました。



「『助手』といわれると、どうしても専門職の下請けのようなイメージを持たれがちです。でも、私たちが求めていたのは、入居者様の生活を支え、スタッフの業務を支えてくれるパートナー。お互いが対等に支え合う存在であってほしいという想いを込めて『サポーター』という言葉を選びました」と小林さんは語ります。

この戦略は見事に的中しました。「介護助手」として募集していた時は反応が薄かった求人が、「サポーター」として「1日2時間からOK」「無資格・未経験歓迎」と打ち出した途端、主婦層を中心に多くの問い合わせが集まり、最終的に延べ100名もの応募が集まるという、予想を遥かに超える反響を呼んだのです。
 

多世代が活躍する「地域のサロン」のような空間へ

現在、現場では約60名のサポーターが登録し、それぞれのライフスタイルに合わせて活躍しています。その層は実に多様です。



まずは、子育て真っ只中のママさん世代。「子どもが幼稚園に行っている間の2時間だけ働きたい」というニーズに見事にマッチしました。次に、子育てを終えたシニア世代や、空き時間を有効活用したい学生さんたち。さらには、社会復帰を目指す方々のステップアップの場としても機能しています。

自身も1歳児の母である管理者の中島さんは、この仕組みの効果を肌で感じています。



「私自身、産後4カ月で復帰し、現在はフルタイムで働いていますが、これが実現できているのはサポーターさんの存在があってこそです。例えば、朝の忙しい時間帯や夕食時など、人手が一番欲しい『ピークタイム』にサポーターさんが入ってくださることで、業務が平準化されます。そのおかげで、専門職のスタッフも残業することなく、定時で帰ることができるんです」

また、サポーター制度は施設の雰囲気も大きく変えました。これまでは職員が業務に追われ、入居者様とゆっくり話す時間が取れないこともありましたが、今では「お茶飲み友達」のような感覚でサポーターさんが入居者様の話し相手になっています。



「学生さんが来ると、お孫さんと話しているみたいだと喜ばれますし、シニアのサポーターさんとは共通の話題で盛り上がっています。施設というより、地域のサロンのような温かい空気が流れているんです」
 

誰でも即戦力になれる「仕組み化」の力


未経験の方がすぐに現場で活躍できる背景には、徹底した「仕組み化」があります。中島さんたちは、配膳車の設置場所や方向、お茶のポットを取りに行く時間などを掲示したり、シーツ交換の方法などを動画にし、二次元コードを読み込めばマニュアルが見られるような工夫を凝らしました。



「初めての方でも、右も左も分からない状態にならないように、業務を可視化しました。また、サポーターさん同士で教え合う文化も根付いており、私たち管理職が細かく指示を出さなくても、現場が自律的に回るようになっています」


写真=人材を生かした生産性向上の取り組みが評価され、2024年9月、厚生労働省の「介護職員の働きやすい職場環境づくり厚生労働大臣表彰」で、優良賞に選ばれた。

小林さんは言います。「サポーターさんの多くは、地域の中で『何か役に立ちたい』という想いを持っています。例えば、引きこもりがちだった方がサポーターとして働き始め、入居者様から『ありがとう』と感謝されることで自信を取り戻し、生き生きと社会参加されていくケースもありました。ここは単なる労働の場ではなく、自己肯定感を高め合える場にもなっているんです」

「業務の棚卸し」という経営的なアプローチから始まったこの取り組みは、結果として、職員の働き方改革、人手不足の解消、入居者様の満足度向上、そして地域住民の社会参加という「四方よし」の成果を生み出しました。

「子どもがいて働きたいけど時間がない、定年退職したけどまだ元気だ。そういった方々は、本来『地域の宝』なんです」と小林さんは力を込めます。
 

既存の枠組みに人を当てはめるのではなく、人の生活に合わせて仕事の形を変えていく。株式会社太陽メディケアサービスが実践する「サポーター制度」は、人口減少社会における企業のあり方、そして地域コミュニティの新しい形を私たちに示唆しています。長岡で灯されたこの小さな希望の光は、これからの日本の介護現場、ひいては働き方そのものを明るく照らす道しるべとなるに違いありません。

●今回取材させていただいた企業
株式会社太陽メディケアサービス(長岡市)
https://taiyo-medicareservice.co.jp/