【企業インタビューvol.9】「辞めるのが当たり前」を変えたい。女性が多い職場だからこそ必要なキャリア継続の仕組み

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【企業インタビューvol.9】「辞めるのが当たり前」を変えたい。女性が多い職場だからこそ必要なキャリア継続の仕組み

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2026.02.27
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内容

歯科業界では、資格を持つ専門職が結婚や出産を機に現場を離れてしまうケースも少なくありません。新潟県上越市の歯科医院「Dental Nest Regalo」では、そうした“当たり前”を変えるべく、子育てと仕事の両立を支える職場づくりに力を入れています。新潟県が新たに開始した認定制度「新潟県多様で柔軟な働き方・女性活躍実践企業認定制度(Ni-ful(ニーフル))」のゴールド認定を取得。開業間もない段階から制度整備に取り組んできました。その背景にある想いや、現場で生まれている変化について、院長の田中弘貴さんに話を伺いました。
 

プロフィール

 

Dental Nest Regalo(デンタルネストレガーロ)(所在地:新潟県上越市)

2023年9月、新潟県上越市下門前に開院。「安息をもたらし、素敵な人生を贈る」をコンセプトに、一般歯科から専門的な歯周病治療、インプラント、小児歯科まで幅広く対応。院内は木目調の温かみのあるデザインで統一され、バリアフリーや個室診療室、キッズスペースを備えるなど、患者とスタッフ双方にとっての居心地の良さを追求している。
 

田中 弘貴(たなか ひろたか)さん

Dental Nest Regalo 院長。新潟県上越市出身。岩手医科大学歯学部を卒業後、神奈川県藤沢市の歯科医院にて約10年間勤務。歯周病治療の専門医として研鑽を積む。2023年、故郷である上越市にUターンし「Dental Nest Regalo」を開業。「行きたくない場所」になりがちな歯科医院のイメージを覆す、通いやすく居心地の良いクリニックづくりを目指している。プライベートでは子育てにも向き合う一児の父。
 

故郷・上越での開業と、我が子の誕生。多忙な日々の中で見えた「働き方」への意識


田中院長が故郷である上越市に戻り、自身のクリニックを開業したのは約2年前のこと。実はそのタイミングは、私生活での大きな転機とも重なっていました。



「開業の準備を進めていた頃、ちょうど第一子が生まれたんです。開業の3ヶ月前くらいでしたでしょうか。妻も歯科医師で副院長を務めているのですが、当然ながら彼女は出産・育児の真っ只中。開業準備と初めての子育てが同時進行する、まさに怒涛の日々でした」

現在、副院長である奥様は育児休業を取得中。田中院長は経営者として、そして現場に立つ歯科医師として医院を切り盛りしながら、家庭では父親として子育てに向き合っています。

「妻が現場を離れ、育児に専念している姿を間近で見てきたからこそ、仕事と子育てを両立することのハードルの高さや、環境整備の重要性を肌で感じることができました。自分自身が『子育て当事者』になったことは、スタッフの働き方を考える上で非常に大きな経験だったと思います」
 

ライフイベントで「辞めない」という選択肢を


歯科医院の運営において、歯科衛生士や歯科助手といったスタッフの存在は不可欠です。しかし、この業界には長年の課題があると田中院長は指摘します。



「歯科衛生士は国家資格であり、高度なスキルを持った専門職です。しかし、スタッフの多くが女性であるため、結婚や出産といったライフイベントを機に退職してしまうケースが少なくありません。せっかく積み上げた技術や患者様との信頼関係が、そこで途切れてしまう。これはご本人にとっても、医院にとっても、そして業界全体にとっても大きな損失だとずっと感じていました」

一度退職してしまうと、復職へのハードルは高くなります。子育てが落ち着いてから戻ろうとしても、ブランクへの不安や、家庭との両立の難しさから、現場復帰を諦めてしまう人も少なくありません。

「だからこそ『辞めなくていい環境』『戻ってきやすい環境』を作りたかったんです。新しい人を採用して一から教育するには、どうしても一定のコストと時間がかかります。それならば、今いるスタッフが安心して産休・育休を取得でき、スムーズに復帰できる仕組みを整える方が、経営的にも理にかなっていますし、何よりお互いの信頼関係が深まります」
 

「Ni-ful(ニーフル)」認定取得。制度活用が人材確保と定着のカギ


こうした想いを具現化するため、同院では開業早期から就業規則の整備に着手しました。その過程で出会ったのが「新潟県多様で柔軟な働き方・女性活躍実践企業認定制度(Ni-ful(ニーフル))」でした。



「個人事業主や中小企業にとって、スタッフが1人抜けることによる金銭的・人的な負担は決して小さくありません。休んでいる間の給与補填や、代替要員の確保など、理想だけでは回らない現実があります。そんな時、県の制度を活用することで、経営的な負担を軽減しながら、スタッフに十分な手当てをしてあげられることを知りました」

制度導入にあたっては、社会保険労務士などの専門家と連携し、自院の規模や状況に合わせた規定を作成。結果として、スタッフが安心して制度を利用できる土台が整いました。

「『制度がある』と胸を張って言えることは、採用面でも大きな強みになります。求職者の方々は、給与だけでなく『長く働ける環境か』をシビアに見ていますから。Ni-fulの取得は、単なる認定マークではなく、当院の『人を大切にする』という意思表示でもあるんです」と田中院長は語ります。
 

「Nest(安息地)」に込めた想い。患者様もスタッフも、心から安らげる場所であるために


医院名の「Dental Nest Regalo」には、田中院長の深い想いが込められています。「Nest」は英語で心安らぐ「安息地」や「隠れ家」を、「Regalo」はイタリア語で「贈り物」を意味します。



「歯科医院に対して『痛い』『怖い』というイメージをお持ちの方は少なくありません。だからこそ当院は、鳥が羽を休めに帰るように、患者様がふっと肩の力を抜いて戻ってこられる温かな場所でありたいと考えています。私たちが提供する医療が、患者様のこれからの人生にとって素晴らしい『贈り物』となるように、という願いを込めました」

この「Nest」というコンセプトは、患者様だけでなく、共に働くスタッフへの想いでもあります。

「建物や内装も、『病院らしさ』を抑え、木目調や温かみのある色使いを意識しました。これは患者様のリラックスのためでもありますが、スタッフにとっても居心地の良い空間であってほしいからです。また戻ってきたいと思える場所。それが私の目指す医院の姿です」
 

復職しやすい環境が、医院の質を高める。長期的な視点で築くスタッフとの信頼関係


現在、同院のスタッフは20代から40代まで幅広く、子育て世代も在籍しています。田中院長自身も、18時には診療を終え、残業をほとんどしない働き方を実践・推奨しています。



「私自身、まだ子どもが小さいので、早く帰ってお風呂に入れたいという気持ちもありますしね(笑)でも、院長である私が早く帰ることで、スタッフも帰りやすい雰囲気ができていると思います。オンとオフの切り替えをしっかり行い、家族との時間を大切にしてもらうことが、結果として仕事のパフォーマンス向上にもつながります」

今後は、現在育休中の副院長(奥様)の復帰も見据えつつ、さらに柔軟な働き方ができる体制を整えていく予定です。田中院長は最後にこう語ります。

「子育てと仕事の両立は、決して楽なことではありません。しかし、それを『個人の努力』だけで乗り越えるのではなく、医院という『チーム』で支え合うことが大切です。親になっても、歯科医療のプロフェッショナルとして輝き続けられる。そんなロールモデルを、ここ上越から発信していければと思います」

「仕事も子育ても、どっちも頑張りたい」。そんなスタッフの想いを、制度と環境、そして温かな眼差しで支えるDental Nest Regalo。その取り組みは、地域医療の質を守り、育てていくための確かな一歩となっています。

●今回取材させていただいた企業
Dental Nest Regalo(上越市)
https://dn-regalo.jp/